■スラップベーシスト名鑑Vol.5
「マーカス・ミラー」〜スタイリッシュに「歌う」スラップ
今回は「スラップベーシスト名鑑」
第5回です。
お待たせしました!
多くのファンを魅了している
スタイリッシュなスラップベーシスト
「マーカス・ミラー」(Marcus Miller)
についてご紹介します。
おすすめのフレーズ・曲
それでは、 マーカス・ミラーのおすすめ曲を
僕なりにご紹介したいと思います。
▼Run For Cover
オープニングから
「マーカス・ミラー節」が炸裂する
彼のヒットナンバー。
最初のリフの耳に残るキャッチーさや、
中盤からの怒涛のスラップ・ソロを堪能できます。
ライブの回ごとにソロ演奏の
アレンジも違っている点も
とても興味深く、楽しめます。
▼Power
和音を活用したインパクトのある
スラップ・フレーズが特徴的なナンバーです。
僕自身もこの曲の和音の使い方から
学びとった部分があり、
淳ちゃんねるのYouTubeなどでは
「ドヤ顔和音」としてアレンジして
活用している技の元ネタとして
大いに参考になせていただいている曲です。
▼Panther
引用している動画はライブ演奏版ですが、
0:25から見られるように
「ゴーストノート」を
ふんだんに取り入れた演奏は
マーカスのスラップ奏法の
独特のニュアンスを特徴づけていると
考えています。
「ゴーストだけでこんなに聴かせるか!」
と突っ込んでしまうような演奏です。
ときに流麗でメロディ的に
または力強くパーカッション的に
スタイリッシュなスラップ奏者
「スラップベース奏法の名手」といえば
マーカス・ミラーを思い浮かべる人も
多いかもしれません。
マーカス・ミラーは、
スタイリッシュなスラップ奏法の
魅力を存分に味あわせてくれる
スラップベーシストです。
歌のないインスト曲で
聴かせるリード演奏を
スラップベースで弾き倒す
マーカス・ミラー名義の
アルバムを聴いていただくと
わかるのですが、
いわゆるインスト曲
(ボーカリストがいなく、
楽器演奏だけで成り立つ曲)
でベースを弾くことが非常に多い
スラップベース奏者と言えます。
つまり、
ボーカリストが不在の編成でも
ベースがメインを取り、
ソロとして演奏することが多く
まるで歌っているかのような音色を
スラップベースで自在に表現しているのです。
その「リード演奏をするスラップ奏法」
という点が、
これまで連載で紹介してきた
ベーシストと違っている点です。
(※もちろん、これまでご紹介した
4人のベーシストさん達も、
ベースで「歌う」ような音色を
表現するというプレイを随所で見せています。
しかし、ここでは、その頻度が
非常に高いという意味で
マーカス・ミラーの特徴を挙げています)
「スラップで歌う」
マーカス・ミラーの
スラップ奏法について
僕なりの視点から特筆することが
あるとすれば、
「スラップで歌う」
という点でしょうか。
「ベースで歌う」
…とはいったい?
「ベースは生き物じゃないんだから、
歌わないじゃないか!」
…という疑問を持たれる方も
いるかもしれません。
これはどういう意味かというと、
スラップベースで出す1つ1つの
音が、非常に表現豊かであるということです。
僕がマーカス・ミラーの演奏を見て
感じていることは、
スラップ奏法を弾いているとき、
例えば「プル」1つを取っても、
鳴らす音1つ1つが表情豊かに
ニュアンスを込めて表現され、
まるで「歌」を聞いているように
感じることです。
「歌声」とは
歌詞の発音や、そのニュアンスによって
同じ音程でも異なる音色が
表現されるものだと思いますが、
マーカス・ミラーの奏でる
スラップベースも、
そのように感じさせる音色です。
プルだけでも1つ1つ表情が違う。
「歌う」ような表情豊かな音色
「いやいや、プルはプルでしょ?
何が違うの??」
と思われる方も
いるかもしれません。(笑)
でも、ちょっと
思い出してみましょう。
プルを弾く時に、僕たちも
こんな事を1つ1つ考えています。
・指の引っかける深さ
・力のいれ方
・音の伸ばし方
・ビブラート(音を揺らす)の具合
・スライドなどのニュアンス
・ミュートの加減
などなど…
同じ「プル」一つを取っても、
いろんな要素が関わって
その音が鳴らされています。
これらを、ニュアンスによって
使い分けることができるとしたら…
とても表情豊かなメロディーを
スラップ奏法で弾くことが
できるのではないでしょうか?
(もちろん、場面によっては
一定のプル音を鳴らす必要が
ある場合もあります。
例えば、バッキング演奏。
(伴奏としてベースを弾く場合)
短時間で鳴らすたびに音の
ニュアンスを変えてしまうと、
演奏が「不安定」と感じられてしまう
場合もあります。
ですから、ここでいう
「1つ1つの音のニュアンス」とは
多くの場合はベースでソロを弾く
(あるいはメロディを弾く)
場合のこととお考え下さい。)
往復サムピング、多彩なゴーストノート、
そして和音を含めたスタイリッシュな演奏
マーカス・ミラーのスラップ奏法の魅力は、
以下のような要素からも感じられます。
(1)往復サムピング奏法を活用し、多様な音色を奏でること。
サムピングをアップとダウンで弾く
「往復サムピング奏法」。
(僕のDVDでも応用編で解説しています)
これを活用し、
1つ1つの音にニュアンスを込めて
多様な音色を表現しています。
(2)随所にゴーストノートを入れてビート感に味付けをする。
随所に細かいゴーストノートを
含ませて、小気味のよいビートを
感じさせてくれます。
これも一種の「手グセ」
かもしれませんが、
彼の独特のゴーストノート付きの
フレーズを聴くと
「あぁ、これは(いかにも)
マーカスっぽいフレーズだな」
と感じることが多々あります。
(曲例:Run For Cover)
(3)和音を含めた、豊かでメロディ感・コード感あるプレイ
まるでギターのソロ演奏のように
メロディ感があり、
フィーリングも伝わってくる
スラップベースのリード演奏と、
和音を活用した
豊かでコード感のある
フレーズを堪能することができます。
(曲例:「Power」)
マーカス・ミラーに憧れて、
「ピックアップ・フェンス」をベース本体に設置。
しかし…使いこなせず(苦笑)
「マーカス・ミラー」と言えば、
スラップ奏法の書籍や
ベースマガジンなどの雑誌にも
必ずといっていいほど
名前が掲載される有名スラップ奏者です。
学生時代にスラップ奏法を
始めたばかりの僕も、
例に洩れずマーカスの情報に出会い、
アルバムを聴いてみました。
そして、かっこいい!と感じたのが
「Run For Cover」と「Power」。
(それらの曲紹介については、
後述したいと思います。)
また、彼のスラップ奏法の
スタイリッシュさに憧れ、
映像や写真などを見てみると…
ベース本体に取り付けられた、
なにやら金具のようなパーツが
あるではないですか。
(動画などで見ることができます)
これは「ピックアップ・フェンス」
といい、ベースの弦の上に
アーチ状に被せるように
設置する部品です。
マーカスの場合、
このピックアップ・フェンスに
拳を擦り付けるようにして
サムやプルをするのが
彼のスタイルだそうで、
雑誌などのインタビュー記事で
自身が「これがないと僕は
スラップ奏法ができないんだ」
などと答えていたのを見かけました。
「なんか、かっこいい!!」
と思った僕。
早速ピックアップ・フェンスを
楽器屋さんで買ってきて、
自分の持っていた
フェンダー・ジャパンの
ジャズベースに取り付けてみました。
「これで俺も、マーカスだ!」
と思い、
早速スラップ奏法を
やってみたところ・・・
・
・
やりにくい!(汗)
僕にとっては、
ピックアップ・フェンスがあることは
スラップ奏法を安定させるどころか
違和感を感じ、
逆にやりにくくて仕方ない…。
(どう感じるのかは個人差があるので、
あくまで参考までに受け取り下さい)
また、指弾きをする時に
それまではピックアップに親指を
置いてツーフィンガー奏法をするのが
僕のやり方だったのですが、
ピックアップ・フェンスを付けると
それもできなくなってしまいました。
さらに、ピック弾きの際には、
それまでは右手の手刀を
弦に置くことでミュートなどを
よくしていたのですが、
ピックアップ・フェンスを付けると
それもやりにくくなってしまい…
結果、マーカス・ミラーの真似をして
ピックアップ・フェンスを付けたところ
・スラップが逆にやりにくく感じ
・指弾きもしにくく感じ
・ピック弾きもしにくく感じ
僕にとっては逆効果だったため、
泣く泣く、後からそれを
外す結果になってしまったことは
僕の苦い経験談として
話のタネによく使っています。
(※ピックアップ・フェンスを
使うことで、どう感じるかは
個人差がありますので、
あくまで僕の個人的な感想として
お受け止め下さいね)
【あとがき】
第5回、いかがだったでしょうか。
マーカス・ミラーについては
「こんなスタイリッシュな演奏が
できるスラップベーシストになりたい!」
と感じさせる、お洒落さ、ヒップさ、
スタイリッシュさ、熱さ、
ブラック・ミュージックのビート感など
多くの要素がありました。
また、
「プルだけでも1つ1つ音色が違う」
という点については、
まだまだ僕も意識すべきと思う所でもあります。
単純に「プル」だけについても
音の出し方の研究には終わりがありません。
マーカスのプレイを見るたびに、
「自分も、表現の幅を磨かねば!」と、
いつも思い出される次第です。
ご意見・ご感想ありましたら、コメント欄にお書きください。
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- スラップベーシスト名鑑, マーカス・ミラー